お盆に東京から墓参りをする為に帰省する時の食事
お盆の時期になると、東京から地方へと墓参りをするために多くの人が帰省をします。お盆のことを離れて暮らす家族と会うためのイベントと考えているともいるでしょうが、そもそもがあの世からこの世に戻ってくるご先祖様の霊を迎えて供養をする儀式です。
精進料理以外はダメ?
では、東京から帰省する家族も含めて食事をする時、どのようなメニューにすれば良いのかというと、基本的にはご先祖様の霊が一緒にいるということもあり、肉や魚などを省いた精進料理が良いとされています。ただし、そうでなければいけないというルールが厳格にきまっているわけではありません。久しぶりに会う人をもてなしたいという気持ちで、寿司や焼き肉などのごちそうを用意することもありますし、亡くなった方の好物を用意することだってあります。また、お盆の食事には地域や宗教ごとの違いもあり、所属しているコミュニティにあわせてメニューを決めるのが一般的です。
とはいえ、宗教行事としてのお盆を重視するのであれば、やはり食事は精進料理か、それに近いものを用意したほうが良いでしょう。精進料理といってもいろいろとありますが、絶対に守らなければいけない決まりとして肉・魚・卵を使うことはできません。なぜなら、仏教では殺生を禁じていますから、食事をするためとは言え動物や魚の命を奪うことはできないからです。肉料理や魚料理ではないけれども、日本料理では出汁に鰹節や煮干しなどを使うことが一般的です。当然ながら出汁としても動物・魚を使うことは禁じられていますから、昆布や椎茸などに限られます。
野菜選びにも注意
さらに、野菜でも五葷と呼ばれるものは使わないようにします。五葷とはなにかというと、にんにく・たまねぎ・ねぎ・ニラ・らっきょうの5種類です。これらの食材に共通しているのは、臭いが強い食材であることです。臭いが強い食材を使えば、仏道修行をするときに息が臭くなり集中できなくなってしまいます。普通の人はお寺のお坊さんのように仏道修行をしているわけではありませんが、ご先祖様の供養をするために身を清めることを考えれば、同じように五葷を避けるに越したことはありません。
もどき料理が活躍
普段、東京で肉や魚を好きなように食べている人、特に子どもにとっては、精進料理は物足りないでしょう。でも工夫次第で、肉や魚の代わりとなる「もどき料理」で食欲を満たすことができます。たとえば、家庭料理でよく使われるがんもどきもその一つです。畑の肉と呼ばれる大豆からつくられた豆腐の料理は、見た目にいろいろな創意工夫が施され焼き魚や肉のつみれにそっくりに仕立てられます。肉を使うよりも健康的でカロリーも低いので、美容と健康に興味がある女性にとっては嬉しい料理です。一生、精進料理を食べるというわけではなく、数日のことですからそういった「もどき料理」で我慢することはそう難しいことではありません。
家族や親戚が集まる場であれば、お酒も飲んで楽しく語り合いたいと思うことでしょう。ただ仏教には不飲酒戒という戒律もありますから、精進料理で身を清めるならばお酒も控えるべきだという考えもあります。ただ出家をしている人でなければ、そこまで厳格に戒律に縛られることはありませんし、地域でお酒を飲むことが当たり前としているならば無理に禁止をすることはありません。
なお、ご先祖様にお供えする食事は、基本的に精進料理ですが、品数は一汁三菜(汁物が1つにおかずが3つ)が定番です。そしてご飯は、白米を器に山盛りにしておきます。普段から仏壇には霊供膳を供える風習もありますが、このときに使う器はそれとは別のものにしておきます。
なぜ素麺なのか
お盆の食事としては、素麺を用意する地域は少なくありません。なぜここで素麺が出てくるのかというと、古代中国で七夕に索餅という素麺に似た料理を食べる風習があったことが関係していると言う説があります。七夕の風習が日本に伝来し、やがて形を変えてお盆に取り入れられたということです。また素麺はその形状から、喜びが細く長く続くという意味を持つ縁起物として扱われるからという説と、茄子と胡瓜でつくる精霊馬の手綱に見立てているという説もあるので、その由来は明確にわかりません。いずれにしても、素麺をお供えする風習があるということは間違いありませんから、用意をしておくほうが良いです。
落雁とおはぎの役割
お供えには甘いものも定番といえます。和菓子の落雁でつくられた花や果実をお供えするのは、その見た目だけでなく日持ちをするということもポイントです。昔は現代のように冷凍庫・冷蔵庫がありませんから、果物はすぐに熟して腐ります。その点落雁は日持ちするので腐ることはありません。お供えをするには最適な甘味です。
あとおはぎも、小豆には魔除けの力があり、もち米は五穀豊穣をもたらすと信じられているのでお供えをする風習があります。おはぎは、食べることは昔としては貴重な甘味を食べる絶好の機会であると同時に、ご先祖様に感謝をする意味もあります。甘味は、13日にあんこがついたお迎え団子を、14日にはおはぎ、そして15日には素麺、16日にあんこをつけない送り団子を供えます。