戒名はいつもらうのか、値段や文字数、変更について
戒名とは仏教の世界において成仏した後の世界での名前のことです。死後には仏となるわけですが、そこでも名前が必要というのはごく普通に生まれてきた考え方でしょう。となると、いつその名前をもらうのか、付けるのかということに関しては亡くなった時ということになり、実際、亡くなった時点でお坊さんにお願いしてつけてもらうのが現代日本では一般的です。ただ、いろいろな価値観の変化に伴い、生前につけてもらうということもさほど珍しいことではなくなりつつあります。
戒名はどのように決まるのか
墓地などで実際の戒名とはどのようなものなのかを見る機会ももちろんあるでしょう。一般的な日本人の名前は姓名合わせて3文字から5文字くらいがほとんどで、中でも4文字が多いでしょうが、墓石などに刻まれたものを見ると何やら漢字が何文字も連なっていて非常に大そうなものになっているという印象を持つ人が多いかもしれません。この印象から、文字数が結構多いものだと感じているかもしれないのですがこれは事実ではありません。戒名とは、実はありとあらゆる人において2文字なのです。では墓石に刻まれたあの漢字の数の多さは一体何なのかということになりますが、これは実は院号、道号、居号などと呼ばれるものも含んでまとめて書かれているために、一見して分かりにくくなっているだけです。
例えば頌弦院智心碩豊居士という名前では、頌弦院というのが院号にあたります。これは通常、社会的な地位が高かったり、寺院に多大の寄進をした人に付けられるもので、逆にいうと付けられていない人も多いです。その次に来る智心というのが道号にあたり、これはなかなか説明が難しいのですが中国における人名の一つの要素である字(あざな)に相当するものとされています。その次にくる碩豊の部分こそ、本来の意味での戒名です。どんな人でも2文字というのは、仏の世界においては生前の地位とか貧富の差などに関わらず全ての人が平等であることを表しています。この点は、院号の説明と矛盾するではないかと思われるかもしれませんが、建前の上ではそうだということでしょう。最後にくる居士というのが居号と呼ばれるもので、これまた実は社会的な地位とか寺院への貢献度などによって変化します。一方では人の名前を呼ぶときの君とかさんのような敬称的な意味合いも持っています。
このように、合計では文字数9文字もありますがそれぞれの要素に分解できるというわけです。ちなみにこの名前はシンガーソングライターの尾崎豊さんのものです。
戒名の相場
ここまでの説明でも分かるでしょうが、生前の社会的な地位などはともかくとして、寺院への貢献や寄進によって決まる部分があるということは、歯に衣着せぬ言い方をすれば値段によって決まる部分があるということです。要するに付けてもらうときのお布施の金額によるわけです。そして、お墓を見れば、その人というか残された家族が一体どれくらいの経済力があったのか、吝嗇家だったのかそれとも気前が良かったのかということがある程度分かってしまうことになります。何とも言い難いところかもしれませんが、事実ですから致し方ありません。
そこで気になるのは相場はいくらかということになるわけですが、仏教界自身はさすがにそのような相場などというものを明らかにしていませんし、そもそもそんな相場などを話題にすることさえ良しとはしていません。そのため例えばハワイ旅行の相場などというものと同じ意味合いで論じることは難しいのですが、最も低いランクのもので数万円程度、最も高いランクのものであればそれこそ数百万円といったくらいの差があるということくらいは日本に暮らす者の一般常識として知っておいても良いでしょう。誰でも人は最後に亡くなるものであり、その時に何も知らないと非常識人の烙印を押されかねないにも関わらず、それこそ学校などでは全く教えてくれない知識だからです。
戒名の変更について
ところで、一旦付けてもらったものを変更するようなことは可能なのでしょうか。その人の生きざまなどを元にお坊さんが熟慮して付けてもらったものですから、安易に変更を依頼するようなことはそのお坊さんを謗ることになるというのは当然です。ですが、しっかりとした理由がある場合には、一度付けられたものは二度と変更できるものではないなどということはありません。例えば、近親者と同じものになってしまったという場合には正当な理由として認められるでしょう。名前が人を区別するものである以上は当然のことです。
また、同じ仏教でも宗派によって付け方に決まりがあるのですが、宗派を間違って依頼してしまったというような場合も、このようなことはもちろん起こすべきではなく予め十分に確認すべきではありますが、変更の理由としては致し方ないでしょう。ただしこの場合はこちらのミスなのですから新しく付けてもらうお坊さんに対して再度お布施をわたす必要がありますし、以前付けてもらったときのお布施が戻ってくるようなことはありません。