お寺の修行は誰でもできるの?
一般的に知られているお寺の修行はあくまで体験です。
僧侶と住職
もしも本格的な修行を体験したい場合はお坊さん、もとい僧侶もしくは住職を目指さなくてはなりません。
僧侶と住職、両者ともに仏教に深く関わって生活していく人たちですが寺院の責任者であるかないかが両者の決定的な違いです。すなわち住職が上司で、僧侶が部下となります。言わば住職は寺院の管理者とも言える立場ですが、住職になるには2つの道があります。1つは先代の子供で、後継者として認められている事、もう1つは宗派の本山で厳しい修行を積んで認められている事です。
実は住職にはこれといった資格の取得はなく、ほとんど世襲制でお寺は継続されています。しかし後継者がいない場合は本山から推奨された僧侶が派遣され、そこの住職におさまるわけです。そのためお坊さんになりたい人は本山に入山し、そこで厳しい鍛錬に励みながら生活しなければなりません。
そんなお坊さんの見習いたちが毎日励む修行のハードさを垣間見せている場所として「永平寺」が有名です。
永平寺での修行の厳しさ
「永平寺」は福井県永平寺町にある寺院で、禅宗の1つに数えられる曹洞宗の寺院でもあります。おまけに1244年に曹洞宗の開祖である道元禅師が創建した事により、曹洞宗の大本山こと中心的な寺院として日本中からお坊さんの見習いこと雲水たちが集まってきますが、先述したように「永平寺」は厳しいお寺です。どのぐらい厳しいかと言えば「日本一」と称されるほどで、なかには逃げてしまう人がいると囁かれています。「永平寺」の厳格さの背景には道元禅師が創建したという歴史がある事が大きく、そのため曹洞宗の金科玉条である「威儀即仏法、作法是宗旨」に忠実に従っているからです。「威儀即仏法、作法是宗旨」とは禅語で、「きちんとした作法を守り、教えに従って生活していく事が曹洞宗のモットーである」と解釈されています。ある意味当たり前な考えですが、「永平寺」で行われている「威儀即仏法、作法是宗旨」はとても過密です。
まず午前3時30分に起床し、その20分後の午前3時50分に朝の坐禅を始める事が1日のスタートとなります。その後午前5時に朝のお勤めをし、午前7時にようやく朝食です。それから1時間30分後の午前8時30分に作務及び坐禅を行い、午前11時に今度は昼のお勤めに励みます。正午に昼食を取り、午後13時に再び作務及び坐禅に取り組んだら次は午後16時の晩のお勤めです。午後17時に夕食をし、そして午後19時に夜の坐禅をしたら、午後21時に就寝となります。このスケジュールを3年間繰り返していくのが基本となるものの、ここに食事や就寝など日常的な動作にすら作法が決められているのでかなりハードです。
例を挙げるなら、食器を置く順番や食べる速度などに禁止事項が定まっています。一応修行の一部が免除される「放参」という日が4と9がつく日に設けられているものの、自由時間はないに等しいです。実は雲水たちには明確な休日はなく、強いて言うなら先述した「放参」が当てはまるものの、厳しい事には変わりありません。おまけに料理も質素なもので、肉や魚、ニンニクなど香りが強い野菜が出ないのが常です。さらに和菓子や洋菓子といった糖分を含む食べ物も提供されないため、雲水だった人の中には「夢に出るほど恋しくなった」という証言があり、実際に早くて3日から1か月ほどで姿を消してしまう人は後を絶たないと言われています。
お寺の修行は誰でも体験可能
しかしここまで厳しい内容でなくても、お寺の修行を誰でも体験可能です。
基本的に寺院に宿泊する宿坊を通してか、あるいは寺院が設けているコースに申し込むかのどちらかになりますが、いずれにしても事前に問い合わせをしなくてはなりません。
4種類の修行
そんな誰でも体験できる修業は大まかに4種類に分けられます。まず1つ目は写経で、これはお経を紙に書き写していくものです。一字一音を丁寧に書いていく事が肝要で、かなりの集中力が求められます。2つ目は坐禅で、正しい姿勢で座ったまま精神を統一していく禅において基本中の基本となる瞑想です。3つ目は冷たい滝の水に打たれてお経を唱える滝行で、これは密教や修験道のお寺で主に行われています。4つ目の阿字瞑想法は特に密教における瞑想法で、サンスクリット語で描かれた「阿」という文字を見つめて意識を集中していくものの、寺院によってはその作法が違うかもしれません。
ちなみに雲水たちが食する精進料理は宿坊した旅行客にしか振る舞われないですが、場合によっては併設されている旅館や店舗で味わえるかもしれないです。
年々増加する体験希望者
このように体験型であればかなり気楽に、しかも日帰りで済む事から年々希望者が増加しています。静かな環境で心身のリラックス効果やストレス解消になっている事、またその物珍しさから希望者が外国人も含めて増えているわけですが、本格的な体験したい場合はやはり雲水になるしか道はないです。